仙台家庭裁判所 昭和33年(家)1417号 審判 1960年9月10日
申立人 庄田よし子(仮名) 外一名
相手方 庄田新吉(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
申立人両名は、別紙目録記載の不動産は庄田作次の所有であり、申立人及び相手方はその相続人であるところ、作次は昭和二九年八月○日死亡し相続開始したのであるが、前記相続人の間に遺産分割の協議が調わないので、分割の審判を求めると述べ、証拠として甲第一号証第二号証の一ないし三、第三、四号証を提出し(甲第四号証中申立人庄田よし子名下の印は同人の実印である)証人岡田修、同庄田平助、同庄田ちよ子、同大川長一、同三谷トシ、申立人両名(一、二回)及び相手方本人(一回)の尋問を求め、乙第一ないし第三号証中、所有権移転登記申請書は、登記所の作成部分の成立は認めるが、他は否認、遺産分割協議書は、申立人ら名下の印が同人らの実印であることは認めるが、他は否認、印鑑証明願は、申立人両名のものについては仙台市長の作成部分の成立及びそれに押捺してある印が申立人らの実印であることは認めるが、他は否認、相手方のものについては不知、委任状は、申立人ら名下の印が同人らの実印であることは認める、乙第四、五号証は成立を認めると述べた。
相手方は、被相続人庄田作次の遺産は申立人主張のとおりであるが、昭和三一年四月頃相手方の肩書居宅において相続人である相手方と申立人らの間で前記遺産について分割の協議が成立し、遺産のうち、申立人よし子は仙台市原町苦竹字町○○番の○宅地九二坪三合八勺を、申立人愡平は同市原町南目字五輪○○番の○、宅地一八二坪六合五勺、同市原町南目字五輪○○番の○、宅地一三七坪六合二勺、同市原町南目字五輪○○番の○宅地五九坪五合四勺を、相手方はその余の不動産全部を取得することとなり、同月二五日協議書作成の上、これに基いて同年六月一二日付で相続登記を完了したものであるから、申立人の本申立は失当であると述べ、
証拠として乙第一ないし第五号証を提出し、証人庄田をき子、同庄田ムメ、同坂田菊次、同舟井しず及び相手方本人(一回)の尋問を求め、甲第一号証、第二号証の一ないし三、第三号証の成立を認め、同第四号証の申立人よし子名下の印が同人の実印であることは認めると述べた。
当裁判所は職権で申立人両名(三回)及び相手方(二回)本人を尋問した。
先づ被相続人庄田作次の遺産につき、本件当事者間に分割の協議が成立したかどうかについて案ずるに、被相続人庄田作次の遺産についての分割協議による相続登記申請書及びその付属書類である乙第一、二、三号証中の申立人ら名下に押してある印が申立人らの実印であることは同人らの認めるところであり、申立人ら本人の供述(二回)によれば申立人らの実印は、同人らにおいてそれぞれ保管しおき、これを使用しなければならない場合に、その都度相手方にも手渡していたことが認められるのであつて、これらの事情に、相手方本人尋問の結果(一回)により真正に成立したと認める乙第一、二、三号証及び証人庄田ムメ、同舟井しず、同庄田をき子、同坂田菊次の各証言並びに相手方本人尋問の結果(一回)を総合すると、相手方は、昭和三〇年二月頃相手方の肩書居宅において申立人両名と話合いの上その承諾を得て被相続人庄田作次の遺産を相手方主張のように配分することになり、申立人からこれに基いて相続登記をなすことをまかされ、昭和三一年六月一二日その登記手続を了したことを認めることができる。
以上のように相続人の協議によつて遺産の分割がなされたのに、これを未だ終了しないものとしてその分割を求める本申立は失当であつて、却下を免れない。よつて主文のように審判する。
(家事審判官 伊藤正彦)
(別紙省略)